ISO/TC 292/WG 6 国際標準化機構/セキュリティ及びレジリエンス
技術専門委員会/保護セキュリティ作業委員会 パリ会合報告書
ISO/TC 292(セキュリティ及びレジリエンス技術専門委員会)/WG 6(保護セキュリティ作業委員会)の会合が、2016 年 4 月 14 及び 15 日に、仏国パリ市のフランス内務省(Ministère de l'intérieur)において開催されました。
今回の会合では、これまで ISO/TC 8(船舶及び海洋技術委員会)で策定してきたISO 28000 シリーズ(サプライチェーンセキュリティ)等について審議されました。
今回の会合には、日本の代表(日本船舶技術研究協会)として、太田進氏(海上技術安全研究所)が出席したので、ここにその概要について報告致します。
なお、参考のため、太田氏が出席した背景及び経緯を以下のとおりです。
背景及び経緯
2001 年 9 月 11 日の同時多発テロを受けて、同年 11 月の IMO 第 22 回総会は、船舶と港湾施設に関する新しい措置を制定することに合意しました。そして 2002 年 12 月に開催されたSOLAS 条約締約政府会議は、新 SOLAS 条約第 XI-2 章「海上の保安を高めるための特別措置」及び国際船舶港湾施設保安コード(International Ship and Port Facility Security (ISPS)Code)を採択し、これら規則は、2004 年 7 月 1 日から発効しました。
米国は、これらの一連の規則強化を主導し、同時多発テロから約 15 箇月程で条約改正までを成し遂げましたが、保安対策を早期に実施するため、既存の規則、即ち SOLAS 条約の枠組みを用いたため、規則の適用範囲が限られており(※1)、武器の密輸防止や船舶がテロの手段に用いられることを防ぐには、こうした規則改正だけでは不十分との認識の下、ISO規格の策定も提案しました。これを受けて ISO/TC 8 は、以下の規格を策定してきました。
ISO 20858:港湾の保安評価及び保安計画の策定
ISO 28000:サプライチェーンのセキュリティマネージメントシステムの仕様
ISO 28001:サプライチェーンセキュリティの評価と計画のためのベストプラクティス
ISO 28002:サプライチェーンのレジリエンス-要求事項と指針
ISO 28003:サプライチェーンセキュリティマネージメントシステムの認証機関への要求事項
ISO 28004-1:ISO 28000 の実施のガイド
ISO 28004-2:ISO 28000 を中小港湾のオペレーションに適用するための付加要素のガイドライン
ISO 28004-3:ISO 28000 を(港湾以外の)中小事業者へ適用するための付加要素のガイドライン
ISO 28004-4 : ISO 28001 の適用がマネジメント目的である場合におけるISO 28000 を履行するための付加的ガイドライン
ISO 28005-1:サプライチェーンセキュリティマネージメントシステム-電子ポートクリアランス-メッセージの構造
ISO 28005-2:サプライチェーンセキュリティマネージメントシステム-電子ポートクリアランス-核となるデータの要素
ISO 28007-1:船舶に武装警備員を派遣する民間会社の指針
※1具体的には旅客船及び貨物船以外の船種(漁船等)、国際航海に従事しない旅客船及び貨物船、総トン数 500 トン未満の外航貨物船に適用されない。
これら規格については、国内においては、他の規格と性格の異なる ISO 28007-1 を除き、弊会の海事セキュリティ分科会がその対応を審議しており、太田氏は同分科会の委員長を務め、上記各種規格の策定に係る ISO 会合にも多数出席しておられます。
一方 ISO は、セキュリティ規格のための新たな技術委員会 TC 292 を昨年立ち上げ、今後、ISO 28000 シリーズの一部は、TC 292 で審議することとなりました。TC 292 の設置を受け、国内では日本規格協会に「ISO/TC 292 国内委員会」が設置され、海事関係では太田氏が委員を務め、弊会長谷川がオブザーバーとして出席しています。
今般、ISO 28000 シリーズを扱う TC 292/WG 6 の会合が、4 月 14 日及び 15 日にパリで開催される旨連絡があり、太田氏が出席することになりました。
今次会合での討議結果等、この会議の詳細につきましては、当会会員専用ホームページ(https://www.jstra.jp/member/)をご参照ください。