第1回 アジア造船技術フォーラム(ASEF) 開催報告

第1回 アジア造船技術フォーラム

Asian Shipbuilding Experts’ Forum for International Maritime Technical Initiative (ASEF)
開催報告

2007年11月15日(木)及び11月16日(金)に日本財団のご支援により、船の科学館にて「第1回 アジア造船技術フォーラム(ASEF)」を開催しました。 このフォーラムは、近年の国際規則の強化に対応するためにアジア地域の造船産業全体が、船舶に係わる国際規制や基準の動向について早い段階で察知し、意見交換等を通じて共通の認識を醸成するとともに、その結論として得られた対応策や意見について国際的に協調して発信し、造船産業全体の発展に繋げることを目的に開催したものです。

2日間にわたって行われたフォーラムには、日本、韓国、中国、インド、シンガポールなど9カ国から約140名(海外から42名)の造船技術者や研究者等が参集し、講演、質疑応答及び意見交換等を通じて参加国間における諸基準の動向に関わる共通認識が深まり、また、連携強化を目指すための活発な討議が行われました。

なお、初日のセッション終了後には、歓迎レセプションが行われ、日本財団の長光常務理事 殿を来賓に迎え盛大に行われました。

更にフォーラム最終日には、海外参加者を対象に、住友重機械マリンエンジニアリング株式会社 殿の御協力を戴いて横須賀造船所へのテクニカルツアーを実施し、建造中の船舶の見学を行い、参加者から多数の質問が提示されました。

フォーラムの概要は以下の通りです。

当協会会長 馬淵隆之からフォーラム設立の主旨説明及び開催に当たっての関係各位のご協力並びに講師の方々に対する謝辞を述べ、ご来賓の国土交通省 春成 誠 海事局長から御挨拶をいただきました。

 

当協会会長 馬淵による開会

 

続いて、社団法人日本造船工業会技術委員会 北野公夫 幹事長から、基調演説(「IMOにおけるアジア造船産業のテクニカルイニシアティブ及び連携の必要性」)が行われました。 北野氏は、船舶の安全・環境に関わる国際貢献のために、アジア諸国の連携と英知の結集によって合理性のある規則作りを目指すことの必要性等について述べられました。

春成 海事局長 北野 造船工業会技術委員会幹事

今回のフォーラムでは、4つの議題が取り上げられ初日にはGoal Based Satandards(GBS)とシップリサイクル、2日目には腐食防止、最後にフォーラムの枠組み(フレームワーク)について、それぞれ討議を行いました。 講演は、日本、韓国、中国の造船技術者及び研究者によって実施され、講演後には活発な質疑応答と討議が行われました。 今回取り上げられた議題、講演内容及び討議結果は、次のとおりです。

● 11月15日(木) 第1日目

フォーラム議題 - 1 Goal Based Standards

1Mr. ManSoo Kim, R.O. Korea

Technical Director/Hull Basic Design Team

Deawoo Shipbuilding Marine Engineering Company

Title:“Issues on the Pilot Panel Meeting of the GBS Tier

2Mr. Kohta Shibasaki, Japan

Shipbuilder's Association of Japan (SAJ)

Manager, Structure Design Section, Initial Design Dept.

Universal Shipbuilding Corp.

Title:“Current Status and Future Development of GBS”

3Mr.Jong-Kap Lee、(R.O. Korea

Principal Research Engineer,

Maritime & Ocean Engineering Research Institute (MOERI)

Title:“Development of GBS Tier V (Industry Standards and Practices)”

 

GBS講演の様子 GBSのパネルディスカッションの様子

Summary

上記テーマの講演及び討議を通じて、GBSが造船産業に与える影響や問題点等が明らかになってきた。また、船舶の安全を確実に向上させる現実的な方法として、工業標準を有効に活用することの重要性が挙げられた。更には、これらに対処するためにアジアの造船産業界は協調していくべきということが全ての講演で共通に提起された。これらを踏まえて、アジアの造船業界は、IMOにおける議論及び活動を注意深く監視するとともに、積極的に活動に参加するべきであるという点で共通の認識を得ることができた。

フォーラム議題 - 2 Ship Recycling

1) Mr. Tsuyoshi Yahagi , (Japan)

Managing Director,

Japan Ship Technology Research Association(JSTRA)

Title:“Current Status and Future Development of Draft Ship Recycling Convention”

2) Mr.In-gyu Lee, (R.O. Korea)

Principal Engineer/Basic Ship Design Team,

Deawoo Shipbuilding Marine Engineering Company

Title: “Current situation on Ship Recycling in Korea” -Matters related with shipbuilders-

3) Mr. Takeshi Naruse, (Japan)

Senior Researcher/Structure and Materials Department,

National Maritime Research Institute

Title: “Overview of the Draft Guidelines for the Development of the Inventory of Hazardous Materials ”

 

リサイクリング関係の講演

 

Summary

シップリサイクル条約の策定に関して、IMOにおいて急速に作業が進捗していることを参加者は認識した。また、韓国におけるシップリサイクルに関する活動について貴重な情報を得た。 さらには、最近のISO/TC8におけるシップリサイクルに関わる国際規格策定において規格開発のプロセス等に問題があることや、今後の影響について、参加者は認識を得た。 これらを通じて、産業界が国際動向を注視し、初期段階から基準策定や国際規格開発活動に参加するべきであるということについて共通の認識を得ることができた。

その他のテーマ

1Mr. Yao Zhihua, (China)

Chief engineer,

China Ship Design and Research Center

Title: “Status and Feedback of the Application of CSR in China ”

レセプション

第1日目のセッション終了後、日本財団の長光常務理事 殿を来賓に迎え、参加者全員が集いレセプションを行いました。 参加者同士、活発な意見交換を通じ交流の輪が広がり、盛況の中、第1日目の予定が全て終了しました。

 

日本財団の長光常務理事による挨拶(レセプション)

●11月16(金)第2日目

フォーラム議題 - 3 Corrosion Prevention

1) Mr. Sang Soo Seo, (R.O. Korea)

General Manager/Anti Corrosion Design-Hull Design Department ,

Hyundai Heavy Industries Co.ltd

Title: “ PSPC Guideline and it's Effect”

2) Mr. Jin Xiaohong, (China)

Professor, Deputy Chief Engineer,

Xiamen Branch of Luoyang Ship Material Research Institute

Title: “The introduction of China National Standards(GB) on Marine Coatings ”

3) Mr. Hong Tao , (China)

Section chief,

China State Shipbuilding Corportion

Title: “The response suggestions on the PSPC implementation in China’s shipbuilding industry ”

4) Mr. Takanobu Murakami, (Japan)

Shipbuilder's Association of Japan (SAJ)

Manager, Ship Planning Part, Ship Planning Department

Shin Kurushima Dockyard Co. LTD.

Title: “Coating conditions in water ballast tank, void space and cargo oil tank of aged ships and required performance standard of protective coatings for new ships”

5) Mr. Shin Imai , (Japan)

Chief Researcher,

Japan Ship Technology Research Association (JSTRA)

Title:“Corrosion prevention by anti-corrosion steel in cargo oil tanks ”

防食関係の講演の様子

Summary

IMOにおける防食基準の策定に関し、講演者から様々な観点から多くの情報が提供され、造船業界への塗装基準の影響と海事産業が今後対応しなければならない多くの諸問題が特定された。 また、新技術として提案されている耐食鋼が、将来造船業にとって有効なものになり得ることが認識された。 今後、これら防食基準問題の克服に向け、アジア造船業界は、協調して対処していくべきであるとの共通の認識を得ることができた。

フォーラム議題 4 アジア造船技術フォーラムのフレームワーク

フォーラム議題1~3までの講演及び討議を総括し、今後のフォーラムの方向性及び枠組みについて熱心な討議を行い、その結果として次のような結論を得ることができました。

● ASEFの活動は、今後も継続して進めていくこととする。

● 今後のASEFのフレームワーク(枠組み)については、
決議文(
当協会の会員専用コーナー参照 のとおり策定され、決議として承認された。

● 韓国代表団から2008年度のASEFを主催したい旨の提案があり、承認された。

 

フレームワークの討議の様子

アジア造船技術フォーラム(ASEF)は、今回第1回目の開催に続き、第2回、第3回と回数を重ねていく予定にしており、次回は韓国で開催することが決定しています。 このフォーラム(ASEF)を通じてアジア諸国との協力関係が強固のものとなり、基準・規格や技術上の諸問題の解決及び造船産業の活性化に繋がり、アジア全体の世界における地位向上が達成されるよう今後とも当協会として力を傾注していくこととしています。 したがいまして、引続き関係各位の皆様のご協力を心より宜しくお願い申し上げます。

なお、アジア造船技術フォーラム(ASEF)の詳細については、当協会の会員専用コーナーをご覧下さい。

 

住友重機械エンジニアリングへのテクニカルツアーの様子

●本件に関する問い合わせ (一財)日本船舶技術研究協会 基準・規格グループ長 小竹 壽朗 〒105-0003 東京都港区西新橋1-7-2 虎の門高木ビル5階 Tel:03-3502-2130 Fax:03-3504-2350 E-mail: kotake@jstra.jp