船舶建造工程の技術革新に関する技術セミナー
~レーザ溶接及びモニタリング技術、そして将来の造船工場について~
開催結果
2014年3月14日
(一財)日本船舶技術研究協会
一般財団法人日本船舶技術研究協会では、日本財団からの助成を得て、レーザ溶接技術とモニタリング技術を2つの柱とする「船舶建造工程の高品質化・効率化技術の調査研究事業」を2012年度~2013年度にわたって実施しましたが、この度、日本船舶海洋工学会及び溶接学会の協賛のもと、「船舶建造工程の技術革新に関する技術セミナー」を開催し、当該事業の成果を報告致しました。
今回のセミナーは、造船、舶用工業、海運等の海事関係のほか、レーザ溶接業界、鉄鋼業界、橋梁業界等からも多数の出席があり、約150名の参加がありました。
開催結果の概要は下記のとおりです。
記
1.日時及び場所
日 時: 2014年3月12日(水) 13:30~17:45
場 所: 日本財団 大会議室
参加者: 造船、舶用工業、海運等の海事関係者及びレーザ溶接業界関係者等を中心に約150名
2.各講演の概要
講演1.レーザ溶接技術及びハイブリッド溶接技術の現状と動向
大阪大学接合科学研究所 所長 片山 聖二
講演の概要:
最新のレーザ溶接技術(リモート溶接、高パワー化、ハイブリッド溶接、超精密溶接、金属-樹脂接合等)の現状と動向が説明された。また、大阪大学接合科学研究所が実施している高速度カメラや高輝度X線等を用いたレーザ溶接現象の観察結果等について説明された。
講演2.レーザ・アークハイブリッド溶接プロセス実験結果
大阪大学接合科学研究所 技術専門職員 水谷 正海
講演の概要:
造船用厚板鋼板の完全溶込みT継手及び突合せ継手の最適溶接条件を求めるために実施したプロセス実験結果が説明された。板厚、ギャップの大きさ、シールドガスの種類、プライマーの有無、溶接面の性状(機械切断、レーザ切断)等の影響を調べる実験を行った結果、ほぼ研究目標を達成した旨の説明があった。
講演3.レーザ・アークハイブリッド溶接継手の強度評価
九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門 准教授 後藤 浩二
講演の概要:
レーザ・アークハイブリッド溶接の溶接施工法承認要領を各船級協会の関連規則等を参考に検討した結果について説明があった。また、プロセス実験で健全であると認められた継手の強度等をこの溶接施工法承認要領に基づき評価した結果について説明があった。
講演4.レーザ・アークハイブリッド溶接実証実験の実施状況
(株)名村造船所 船舶海洋事業部 生産管理部 溶接技術課長 濵﨑 俊之
講演の概要:
名村造船所で実施したレーザ・アークハイブリッド実証実験の概要が説明された。また、造船所においてレーザ・アークハイブリッド溶接の適用として、ロンジの先付ラインやFCB板継ラインに適用の可能性がある旨の説明があった。
講演5.レーザ・アークハイブリッド溶接のビルトアップロンジへの適用検討結果
ジャパンマリンユナイテッド(株) 技術研究所 生産技術研究グループ 主幹 篠原 紀昭
講演の概要:
レーザ・アークハイブリッド溶接をビルトアップロンジの製作に適用することを目的に、開先精度(GAP、切断端面等)の影響、プライマーの影響及び溶接速度限界を調べる実験を実施した結果について説明された。切断端面の影響は小さいこと、プライマーを除去するとブローホールが削減できること、溶接速度は3m/minで良好なビード外観が得られること等が説明された。
講演6.モニタリング技術による造船工場の見える化
東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授 青山 和浩
講演の概要:
モニタリングによる造船工場の見える化の意義が説明された。また、小組立工場を例に、工場のモノの流れや人の動きを低コストで且つ簡便にモニタリングするシステムの開発と実証の説明があった。更に、モニタリング技術の造船への具体的な応用例として、工程計画・管理システムへの応用(計画と実際のズレの把握と対策等)、モニタリングと生産シミュレーションの連携等が説明された。
講演7.革新的技術のロードマップと将来の造船工場コンセプト
(独)海上技術安全研究所 構造解析・加工研究グループ 主任研究員 松尾 宏平
講演の概要:
船舶建造高品質化・効率化に寄与すると考えられる革新的技術を幅広く検討し、それらの造船への適用に関するアンケート調査結果を踏まえて、11の技術開発課題を抽出し、その技術ロードマップの説明があった。さらに、50年程度先の将来の造船工場のコンセプトイメージを作成して冊子にまとめた旨の説明があった。
講演8.船舶建造高品質化・効率化プロジェクトのまとめと今後の展開
(一財)船舶技術研究協会 常務理事 田中 護史
講演の概要:
本プロジェクトのまとめとして、アフラマックスタンカーの建造にレーザ・アークハイブリッド溶接を大規模に適用するケーススタディを実施し、従来のアフラマックスタンカーの建造と比較して大きな工数削減の効果が得られることが示された。また、今後の展開として、実証実験装置を九州大学に移設し、研究を継続する旨が説明された。