第16回ISO/TC 8/SC 6総会(航海及び操船分科委員会)が、2021年10月28日にオンライン(Zoom)にて開催されました(10月25~27日開催のISO/TC 8/SC 6/WG 16会議 (船内情報系機器用ネットワークシステム作業委員会)と併催)。 このSC 6総会には7カ国(日本8名、中国11名、デンマーク1名、フィンランド1名、ドイツ2名、韓国3名、英国1名)及び1リエゾン(BIMCO 1名)から28名が参加しました(資料SC 6 N 649 (巻末付録1) 参照)。 日本からは、TC 8/SC 6議長の庄司るり氏(東京海洋大学)、TC 8/SC 6/WG 1兼WG 3コンビーナの宮本佳則氏(東京海洋大学)、WG 9コンビーナの横井威氏(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所)、WG 16コンビーナの森本峰行氏(寺崎電気産業株式会社)の他、荻野市也氏(古野電気株式会社)、家城竜也氏(株式会社YDKテクノロジーズ)、長谷川幸生・佐藤公泰(当会基準・規格グループ 規格ユニット)の計8名が出席しました。 今次会合では、現在SC 6で作成中の次の国際規格案の進捗状況が報告された他、主に以下の決議文が作成され、我が国が同国際委員会における国際規格の作成を引き続き主導することになりました。
【船内情報・ネットワーク共有化のための我が国主導の国際規格案(3件)】 1.ISO 16425(2013年版の改訂):船内機器用情報系ネットワークシステムの装備に関する指針(船内LAN装備指針) 改訂の目的: WIFI(無線LAN)要件及びセキュリティ要件の追加、船内LAN の設計に関する工程と各工程に必要な入出力事項の要件化(船主、システムインテグレーター、船舶管理会社等の役割も考慮)および同要件化基づく規格全体の見直し(工程順に章立てを整理し、適用を容易化)。 2.ISO 19847(2018年版の改訂): 実海域データ共有化のための船内データサーバー要件(船内データサーバー) 改訂の目的: 第三者認証を行うために必要な試験要件等の追加、データプロバイダーが作成する各種アプリケーションで利用し易くするためにデータ演算機能を追加およびサイバーセキュリティ要件の追加。 3.ISO 19848(2018年版の改訂):船上機械及び機器用データ標準(船内データ標準) 改訂の目的: 利便性の向上を目指し、2018年版に記載されている機関関係データに加えて、航海データ、運航データ、気象データ、燃料性状データ、船体運動データのコードブックを附属書B に追加。この附属書Bの基礎となっている、一般社団法人日本舶用工業会が作成したJSMEAコードブックはhttp://jsmea.or.jp/ssap/topics/jsmea_iso19848.htmlから閲覧可能。
【IMO性能基準に基づく船橋機器の試験要件およびIMOガイドラインに引用されている速力試験データ解析法を定めた我が国主導の国際規格案(8件)】 1.ISO 8728(2014年版の改訂):船用ジャイロコンパス 改訂の目的: 船橋警報管理(BAM)(※)に関する要件の取入れおよび航海情報記録装置(VDR及び他の機器へ出力するためのデジタルインタフェース詳細要件の追加。 ※船橋警報管理(Bridge Alert Management [BAM])とは、統合航行システム(Integrated Navigational System[INS])及び統合船橋システム(Integrated Bridge System[IBS])への適用を目的に、警報(アラート)の処理、配信及び表示等の要件を定めたもの。このBAMの性能要件は、IMO Res. MSC 302(87)で定められており、欧州連合(EU)の舶用機器指令(MED)では、船橋機器に対して強制要件とされている。 2.ISO 9875(2000年版の改訂):船用音響測深装置 改訂の目的: ISO 8728と同じ。 3.ISO 11606(2000年版の改訂):船用電子磁気コンパス 改訂の目的: 船橋警報管理に関する要件の取入れおよびデジタルインタフェース要件に船内LAN用のデジタルインタフェース要件を定めたIEC 61162-450:2018を選択肢として追加。ただし、2002年以前に搭載された船用電子磁気コンパスを対象とした規格であるため、「対応できる場合には」の限定付き(2002年以降搭載の船用電子磁気コンパスはISO 22090-2:2014[地磁気方式真船首方位伝達装置]を適用)。 4.ISO 15016(2015年版の改訂):速力試験データの解析による速力性能及び出力性能の評価に関する指針 改訂の目的: MARPOL条約附属書VI第5.4規則において参照されている「EEDIの検査・認証に関するガイドライン」に関する国際試験水槽会議(ITTC)の推奨手順(RP)は2017年版ですが、今年のITTC総会で2021年版が作成されたことに伴うITTC推奨手順2021の反映および内容の経年による陳腐化を目的として規格制定後5年ごとに実施されるISO定期見直し投票結果の反映。 5.ISO 20672(2007年版の改訂):船用回頭角速度計 改訂の目的: 船橋警報管理に関する要件の取入れおよびデジタルインタフェース要件に船内LAN用のデジタルインタフェース要件を定めたIEC 61162-450:2018を選択肢として追加。ただし、船橋警報管理に関しては、「対応できる場合には」の限定付き(同機器が表示器[インジケーター])につき、要件の適用が困難な場合を考慮)。 6.ISO 20673(2007年版の改訂):船用電気式舵角指示器 改訂の目的: ISO 20672と同じ。 7.ISO 22554(2015年版の改訂):船用プロペラ軸回転計-電気式及び無接触式 改訂の目的: ISO 20672と同じ。 8.ISO 22555(2007年版の改訂):船用プロペラピッチ指示器 改訂の目的: ISO 20672と同じ。
【他国主導国際規格案(2件)】 1.ISO 4891(新規):船舶用スマートアプリケーションネットワーク(提案国:ドイツ) 概要: 船内各機器とタブレットおよびモバイルとをつなぐゲートウェイ要件を定める。 2.ISO 25862:2019の部分改訂(Amendment): 磁気コンパス安全距離試験(提案国:中国) 概要: 船用磁気コンパス要件を定めたISO 25862:2019の新たな参考附属書として、磁気コンパス安全距離試験に関する要件を定める。
【このたびのSC 6総会で作成した我が国関係の主な決議文】 SC 6決議109: 東京海洋大学 宮本佳則氏のSC 6/WG 1(ジャイロコンパス作業委員会)コンビーナ任期を2024年末迄の延長を承認。 SC 6決議114: 我が国主導のISO 16425(船内LAN装備指針)の名称を「Guidelines for the installation of ship communication networks for shipboard equipment and systems」から「Specification for the installation of ship communication networks for shipboard equipment and systems」への変更を承認。(規格名称に"Guidance" 又は "Guidelines" が含まれる場合は、規格内で"shall" の使用はできないことに注意)
今次会合での討議結果等、この会議の詳細につきましては、当会会員専用ホームページ(https://www.jstra.jp/member/)をご参照ください。 |