平素より当会の実施事業につきまして、日頃より格別のご厚情を賜りありがとうございます。当協会では日本財団のご支援をいただき、関係者のご協力のもと、IMOにおける船舶の国際基準策定に積極的に取り組んでおります。 今般、表題のセミナーを開催し、船舶の安全性に係わるIMOの審議動向として、「自動運航船」及び「第二世代非損傷時復原性基準」についてご紹介・解説することと致します。 また、IMOにおける安全諸基準の最近の審議動向として、2026年に発効が予定される安全関係の条約改正や現在審議中のもの、並びに今後審議が予定される事項についてもご紹介させて頂きます。
■自動運航船関係の審議動向について ヒューマンエラーに起因する海難事故の減少や船員労働環境の改善を目指して、日本を含め世界各国で自動運航船の開発が進められています。IMOにおいては、自動運航船に係わるルールの将来的な義務化を見据えつつ、まず非義務的なルールを策定していくことが合意され、そのための作業計画・タイムライン等を示すロードマップが策定されております。 現在、自動運航船に係わるルールの骨子案が原則合意され、セクション(航行、遠隔操船、通信等)ごとに日本を含む有志国で起草作業が進められているところです。 日本は、こうしたIMOにおける自動運航船に関する議論を主導し、実用化に向けた環境を整備することで、海難事故の減少や船員労働環境の改善、我が国海事産業の国際競争力強化の実現を図っております。
■第二世代非損傷時復原性基準の解説について 船舶の非損傷時復原性に関する国際基準として、2008年に採択された「2008年の非損傷時復原性に関する国際コード(2008 ISコード)」が世界的に適用されております。 2008 ISコードは、動的な要素(波浪等による影響)について十分に考慮されたものではないこと、及び超大型船や新形式船等への適用に難があることが指摘されており、物理則に基づいた、より柔軟性の高い設計基準とする第二世代の非損傷時復原性基準の策定がIMOで進められてきました。 第二世代非損傷時復原性基準は、船舶が五つの危険モード(※)に耐えうる設計となっているかを判定するもので、簡易に算出可能だが高い安全余裕を要求する「簡易基準(第一段階基準及び第二段階基準)」及び詳細な計算が必要だが求められる安全余裕は個々の船型に即した合理的なものとする「直接評価」により構成されております。 (※) 復原力喪失、パラメトリック横揺れ、ブローチング、デッドシップ状態及び過大加速度 さらに、これらの基準を満足できない場合であっても、航行区域や航海速力を制限する等の措置(運航制限、運航ガイダンス)をとることで運航を認めることが可能となる仕組みも基準に含まれます。 今般、この第二世代非損傷時復原性基準を規定する暫定ガイドライン及びその解説文書がIMOで承認されました。現在は、将来の新基準の義務化も視野に入れて、各国でのトライアル運用が行われる段階となっております。 この新たな第二世代非損傷時復原性基準の策定において、日本はIMOのコレスポンデンス・グループのコーディネータを務め、主導的な立場をとって参りました。 つきましては、年度末の大変ご多忙な時期とは承知しておりますが、下記のとおりセミナーを開催しますので、皆様のご参加をお待ち申し上げます。
記
・・・・・ セミナープログラム ・・・・・・
<第一部:IMOにおける基準の策定状況について>
12:30~ 開場 13:00~13:05 開会挨拶 一般財団法人 日本船舶技術研究協会 会長 田中 誠一
13:05~13:25 IMOにおける自動運航船関係の審議動向 国土交通省 海事局 安全政策課 船舶安全基準室長 鈴木 長之 様
13:25~14:05 IMOにおける安全諸基準の最近の審議動向 (2026年発効の条約改正、現在審議中の改正、今後審議予定の改正) 一般財団法人 日本船舶技術研究協会 主任研究員 江黒 広訓
<第二部:第二世代非損傷時復原性基準の策定について>
14:05~14:45 第二世代非損傷時復原性基準の概要 国立大学法人 大阪大学 大学院 工学研究科 地球総合工学専攻 船舶海洋工学部門 教授 梅田 直哉 様
14:45~15:00 コーヒーブレーク
15:00~16:30 5つの危険モードの解説 国立大学法人 大阪大学 大学院 工学研究科 地球総合工学専攻 船舶海洋工学部門 教授 梅田 直哉 様
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所 流体性能評価系 耐航性能研究グループ 上席研究員 黒田 貴子 様
※講演にはいずれも質疑応答の時間を含みます。 ※プログラムは都合により変更になる場合がございます。 |